挑戦!シクロクロス全日本選手権「シングルスピード」

「レースの厳しさはコースが決めるのではない、選手自身が決めるのだ」

なんだか哲学めいた言葉ですが、人生そういうものでしょうか。外的環境ではなく、己の中に競争を見出す…。

それに通ずるものがあるのが「シングルスピードレース」という世界。ギアを取り除いたシンプルな車体による競争。オフロードを走る醍醐味が凝縮された世界が、そこにあります。

年に一度の日本チャンピオンを決める「シクロクロス全日本選手権」。エリートレースの併催レースとして行われた「シングルスピード部門」に、私カゲヤマ挑戦して参りました!

会場となる滋賀県マキノ高原は、くもりのち雨予報。路面は重くなるかな…と予想して、2種類用意したギアの軽い方(20T)を装着しました。(はて次はいつ使うんだろう…。)

私は全日本エリートカテゴリーに出られるほどのランキングを持っておらず、また国内エリートランキングポイントを持っていると併催マスターズレースにも出られず、そんな事情もあります。

バイクは普段の通勤バイクでもある「TREK CROCKETT」クロケット号を、シングルスピード(SS)仕様に組み替えて用意。これは軽いぜエ!

事前の出走リストを見て、ちょっとメンバーがやばいと思いました(笑)。よって超決戦仕様 Bontrager AEOLUS 3(アイオロス3)にSSギアを装着。「車輪だけが勝手に進んでいく」と形容されるアイオロス、頼みます!

クロケットは「STRANGLEHOLD」(ストラングルホールド)と言う小物が付いています。SS仕様にしてもしっかりチェーンテンションがかかるスグレモノ。荒れたレースでも、チェーン脱落を防いでくれます。(今回初めて使いましたがw)

ストラングルホールドの詳しい動画(TREK YouTube)はこちら!
https://www.youtube.com/watch?v=4zZTCSY3sFs

スタートラインに並んだのは20人強。普段のレースもシングルスピードで走る猛者、翌日のエリートカテゴリーにも出場する強者、日本チャンピオンを狙う達人。みな事情は様々…。

今年のレースは成績イマイチなこともあり、定番の最後尾スタート!さあ「ぜんめーを探せ!」

かつてはMTBシングルスピードで耐久レースを走っていたカゲヤマ、ずいぶん昔の話なので今日はノーマークかな(笑)。自分でもどれだけ走れるか、全く分かりません。

ホイッスルでスタート!上り勾配のスタート、重めのギアのシングルスピードバイク。周囲はゆるやかに、でも勢いよく加速していきます。

今日は一発でペダルもはまり、するすると集団の中をポジションアップ。いつもと違うのは、全員がシングルスピードバイクなので「ガコン」「ガキッ」というギアチェンジの音がしないこと。ブンブンとタイヤが地面を蹴る音だけが、ホームストレートに響きます。

本コースに入り、コーナーを抜けるたびに…スムーズに加速しません、だって今日はシングルスピードだもん。勾配に合わせて重いギア、下りは思い切り軽いギア。全身の筋肉を使ってバイクを押し進める!

徐々にポジションを上げて、2周目に入るころには2位~6位がひしめく集団に滑り込みました。40分のSSクラス、今日は5周回のレースと、この周で知らされます。(シクロクロスは時間制競技。2周目に周回数が決まります。)

先頭は関西シクロクロスの強豪の川村選手。1人圧倒的なパワーで先行…。は、はえぇ。

集団には、関西シングルスピード界の強豪コッシー選手、野辺山シングルスピード優勝者のマキノ選手、東北の強豪SSレーサークニイ選手、そして後から知ったけど新進気鋭の東北人鈴木選手、そして私カゲヤマ。好き物のヘンタイぞろい(笑)。

付けているギア比と、お互いの得意不得意なパートを探り合いながらレースは進みます。経験豊富なコッシー選手が積極的に牽引する中、パワーはピカイチながら滑りやすい路面でミスする鈴木選手が食らいつく。

カゲヤマはこの2人とギア比が同じらしく、なんとか着いていけます。バイクの軽さと長年のレース経験なら負けない(つもり)!後続はメカトラブルやミスで徐々に後退。2位争いはコッシー、スズキ、カゲヤマの3人に絞られたらしい。

この日は10時を過ぎても小雨。気温も全然上がらない…。凍りそうになる指先と心を、意外と多い声援(関西はアウェイですが…)が後押ししてくれます。

スズキ選手の相次ぐアタックに、コッシー選手も4周目にして遂に後退。カワムラ選手は1分以上先、2位争いのマッチレースとなりました。パワーで先行するスズキ選手。スリップしてもガツガツ登っていきます。対するカゲヤマは登り返しも出来るだけ乗車でクリア、コーナーワークで隣に並ぶも、スズキ選手と時々肩がぶつかる激しい争い…。

いよいよ登りストレートでのゴール勝負。余力があるのはこっちのはず!と思い切って先行。SSギアなら先行したもの勝ちと思いきや、スズキ選手が寄せて詰める!しかしアイオロスホイールが伸びる(ズルくない)!一車身先行~!

結果、2位でゴールとなりました。全日本選手権の表彰台は素直にうれしいです。

この日のタイヤは、フロントに「シラクCX チューブレス」1.7bar、リアに「シラクCX EDGE チューブレス」1.8bar。路面はややマッドコンディションでしたが、ドライ用の「エッジ」をリアに履かせたのが正解だったかもしれません。滑りやすい路面は押し&担ぎになるシングルスピードレース、勝負所は踏める芝生と舗装道路のストレートと考えて…。たまたまかもしれませんが、自分のチョイスが当たったのもうれしいポイント!機材選択を見極める…これもレースの一部です。

ゴール後は意外と(?)多くの方に祝福していただけました。いやあ楽しそうだなぁ、オレも出ればよかったぁ、来年は一緒に走ろうぜぇ、多くの選手に声をかけられました。

「え、来年もSSに出るのかオレ…。」

シクロクロス、シングルスピード。全身全霊を使ったスポ根パズルみたいなものです。ツラ楽しいですよお。大人になってこんなにツラ楽しい思いが出来る自転車、シクロクロス、サイコーです!

さ~すっかり寒さにも慣れてしまいました。冬も全力で楽しんでいきましょう!

(レポート中写真は、織田様、辻様、井上様、阿部様よりいただきました。いつもありがとうございます。)