’凪’に憧れて、のんびり房総ライド。

とは、
風力0の状態をいう。
海風から陸風へ切り替わるときの無風状態を「夕凪」、陸風から海風へ切り替わるときの無風状態を「朝凪」という。(Wikipediaより一部抜粋)

その言葉は関東の平野部つくばで生活を送る私にとっては、普段馴染みのない言葉です。読み方すら知らず検索してみると、
風冠の中に止まるでナギ、真にその状態を象形した文字だなと感心。語感の軽い響きもまた脳裏で反芻するんです。
以後、凪にに対する憧憬の念が募るのでした。

ここ最近は穏やかな小春日和が続いており、海辺は凪日和だろうなんて勝手な淡い期待抱いて、房総九十九里へ。


がしかし期待は見事に裏切られ、テトラに打ち寄せる波が荒々しく白いしぶきを上げております。凪へ憧憬はライドを前にして砂上の城のごとく崩れ去ってしまいました。

凪は一旦諦めつつも、房総の風光明媚なところを一回りしてみたいと思います。
自分が自転車を一番愉しいと思える瞬間って、初めて軌跡を残す途であり、そこからの風景を見ることです。
整然と整備されたサイクリングロードや観光地化景勝もいいですが、車社会以前に張り巡らされた下町の裏路地や農耕地にトラクターを通すための土盛りのあぜ道など、地元の人々の生活に根差した路に興味が行ってしまいます。

今日の行程も、大半がお初路。ワクワク、ドキドキさてどうなることやら・・・・



今日も私の一漕ぎ前を走るのはその漢

露払い役として危険な雰囲気が漂う個所ではスゥーっと前に出て曳く。曳く。曳き続ける。
何よりも誘われたライドを断ることのない、底抜けの体力とお人好し、守谷店スタッフの西山氏。
よってライド中の写真はほぼ同じアングルの彼の後姿しか残らない。

そこそこ強い北風に乗って一路南下。まずは勝浦あたりを目指して!!
海岸に迫り出した崖を貫くトンネルをいくつ越えた頃だろうか!?
名前が印象に残らなったけど入り江の小さな漁港。なんかいい雰囲気出てたなぁぁ。
初めて見る景色なのに妙に懐かしい気持ちになる。全く海に関わりない育ちなのに。

根拠のない懐かしさに引き寄せられて足を止めてみる。
お昼時前の漁港は人気もなく静まりかえっていて、民家の軒先で猫が日向ぼっこなんかしている。
「あれっ、これって凪」
一瞬想いがよぎったが、きっと違う。そうだったとしても目の前の防波堤がそうさせているだけだと思うことにした。
初めて見る凪は、もっと大海原の静寂のその瞬がいいのだ。

今日唯一の堀越の後姿


さてさて漁港をあとにして、お腹も丁度空いてきたところです。
海岸沿いには観光客受けしそうな小奇麗な海鮮レストランが軒をつらねておりますが、その一角で両側の大店に挟まれるようにしてひっそりたたづむ一軒の定食屋さんに立ち寄ってみました。
白無垢に屋号だけが書かれた立て看板が表通りに立っているだけの質素などこにでもありそうな面構えですが、それでもお客さんが入っているところをみて地元受けもよさそうな気をしたのです。地味でのも繁盛するにはそれなりの理由があるんだろうなと・・・・・

味も値段も大満足の内容でした。なんと5種類の味噌汁が飲み放題。あら汁、つみれ汁、豚汁、海藻と海苔汁とメインが出される前に満たされてしまいそうでした。
次回はこの定食屋さん目当てにをロングライドを計画しても十分満喫できそうです!!

食後の満腹状態でも追い風に助けられて苦も無く南下を続けると、鴨川の市内が見えてきました。
市街地の街路樹も温暖な気候故かノビノビしていて南国情緒が漂います。


鴨川の中心に差し掛かったあたりで針路を西に向け内陸にむかいます。
海岸沿いの僅かな平地から一気に丘陵地帯に引き込まれます。


本日の折返しポイントにかんがえていた大山千枚田。

日本の原風景といわれる「棚田」
日本の棚田百選にも選ばれる大山千枚田。千葉では唯一のノミネートです。

11月とは思えない陽気が居心地をよくしてしまいます。着実に日は傾きかけているのをどこか上の空で過ごしておりました。
後から振り返ると、どこの棚田の写真も田植え前の水が張った時期の夕日が沈む黄昏時が輪郭が浮き上がって一番映えるようです、自走ではちょっと厳しいかなぁ。

棚田を後にすると西日が一気に勢いを増して哀愁じみてきました。
ここまで6時間かけて90㌔、そこから折り返してこの先は千葉の内陸中央を縦断する丘陵地帯で獲得予定標高は1000メートル。
山間を避けて海岸に出ても向かい風。ここは覚悟を決めて突き進むしかありません。

その帰路の途中も養老渓谷など千葉を代表する景勝地をかすめてきましたが、写真どころか記憶にも残らないくらいの勢いで駆け抜けてきました。

唯一写真に収めたトンネルの一場面。
山間部の入り組んだ小さなトンネルですが、まるで真空管のようなネオンの輝きと無風地帯、本日唯一’凪’を感じた一瞬でした。

スタート地点に戻る頃にはすっかり日も暮れてしまいました。
棚田を折り返した時点ではどうなることやらと思いましたが、最悪の想定よりはだいぶ早く帰還できました。

未踏のロングライド ワクワク ドキドキ ハラハラと ふた月分の人生を濃縮したような一日でした。